レポ:「気ままにダイバーシティトーク Vol.3」大学からでは遅すぎる、一貫した生きる力を身につける新しい学び方が必要だ

イベント名:気ままにダイバーシティトーク(2022年7月27日)

テーマ:大学からでは遅すぎる、一貫した生きる力を身につける新しい学び方が必要だ

ゲスト:大谷真樹氏(インフィニティ国際学院 創設者・学院長)


■ 意図

「気ままにダイバーシティトーク」は「ダイバーシティをもっと身近に、カジュアルに語る場」として企画されています。

今回は、初等・中等教育の現場から見た課題と可能性に焦点を当てて、教育の新しいかたちを考える機会として開催。


■ ゲスト紹介

大谷 真樹さんはNEC勤務後、インターネット黎明期に独立しベンチャー企業を経営。後に事業をヤフーへ売却し、以降「人を残す教育」へと転身した。

大学の学長として教育現場に携わる中で、「自分の頭で考えない学生」「答えを求める教育」に強い危機感を抱き、2019年にインフィニティ国際学院を設立。

「世界を舞台に、自ら考え行動するリーダーを育てる」ことを理念に掲げている。


■ ゲスト・トーク

1.教育改革への想いと松下村塾での気づき

2018年、山口県の松下村塾を訪ねた際に、「問いを与える教育」の原点に触れたことが転機となった。

吉田 松陰が実践した対話型教育に感銘を受け、「自ら考え、行動できるリーダーを育てることこそ自分の使命」と確信。

この経験が、同学院設立の原動力になったという。

2.日本の教育が抱える構造的課題

  • 150年間変わらない「一斉教育」「暗記中心」「標準化」。

  • 教室に閉じ込める仕組みは、もともと軍隊・植民地型教育の名残。

    →「はみ出す個性」が排除される構造が続いている。

  • 世界を変えてきたのは異端児・イノベーター。

    日本教育の限界はここにあると指摘。

3.インフィニティ国際学院の取り組み

  • 全寮制・フィールドワーク型教育

    北海道・沖縄・海外など、多様な環境で「自分の足で考える学び」を実践。

  • 3年間の流れ

    1年目:英語・探究の基礎

    2年目:海外・国内でのフィールドワーク(コロナ禍では国内へ転換)

    3年目:個別探究・インターンシップ(ホテル、農業、留学など)

  • 特徴

    • 山登り・トレッキングを通じた「内省と成功体験」。

    • 「自己肯定感」と「突破力(メタスキル)」を重視。

    • 偏差値でなく「自らの探究」から進路を選ぶ。

      →結果として慶應・上智・APU・海外大学など進学実績も高い。
      ここに行けとか、行くための指導をしたわけではなく各自が自分で選択。


■教育と親・教師への視点

● 入学で最も重視するのは「親の価値観」

  • 子どもの適性よりも、親の教育観と学校理念の一致が重要。

  • 管理型教育に慣れた親とはミスマッチが起きやすく、事前面談を重視している。

● 「変わるべきは子どもではなく大人」

  • 子どもは素直に変化するが、親や教員は固定観念が強く変わりにくい。

  • 「教頭や校長など意思決定層の変化こそが日本の教育を変える鍵」と指摘。

  • 現在、教頭向けサマースクール・オータムスクール構想も進行中。

● 公教育との関係性

  • 公教育そのものを否定するのではなく、「多様な選択肢を増やすこと」が重要。

  • 公立・私立・フリースクール・ホームスクーリングが共存できる社会を目指す。


■参加者との対話・印象的なやり取り

  • 高校生へのアート教育を実践する参加者からは、

    「答えのない問いに向き合う力」「違いを認める教育」の重要性に共感が寄せられた。

  • 大谷氏は、「一人ひとりの学び方に合わせた個別最適化教育」を強調。

    文字・映像・対話など、学び方の多様性を尊重する姿勢が印象的だった。

  • 教育現場の格差や教員の意識変革についても、活発な意見交換が行われた。


■学びと気づき

  1. 教育の本質は「自ら考え、行動する力」を育てること。

    教師や親が“答えを与える”のではなく、“問いを投げかける”存在になる重要性を実感した。

  2. 変革の主役は大人である。

    子どもが変わる前に、親や教員が変わらなければ教育は変わらない。

  3. 選択肢の多様化が社会の希望になる。

    公教育に頼らずとも学べる環境を整えることが、次世代を支える道である。


■印象に残った言葉

日本の教育を変えるのは“異端児”である。

子どもは変われる。変わるべきは大人。

公教育を否定せず、選択肢を増やしていこう。


■まとめ

今回のトークを通じ、教育とは「知識を与える行為」ではなく、「人生を共に探求するプロセス」であると再認識した。

大谷 真樹さんの実践は、まさに“ダイバーシティ教育”そのものであり、子どもたちの多様な才能を活かす環境づくりの好例であった。

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