ダイバーシティ認知と理解に関する調査2021年版

 

NPO法人GEWEL(ジュエル)では、2021年、日本全国にお住いの方々を対象に第2回「多様性のある社会づくりのための基礎調査」を実施し、その結果を「ダイバーシティ認知と理解に関する調査 2021年版」集計レポートとしてまとめました。

レポートのダウンロードは以下のフォームよりお申し込みください。入力いただいたメールアドレス宛にダウンロード用のリンクURLをお送りいたします。

NPO法人GEWELでこれまで実施した調査研究については、こちらをご覧ください。

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「多様性のある社会づくりのための基礎調査」 ご協力のお願い

NPO法人GEWEL(ジュエル)では、日本全国にお住いの方々を対象に、下記のアンケート調査を行うことになりました。

◎調査名称:「多様性のある社会づくりのための基礎調査」(港区男女平等参画センター:リーブラ助成事業)
◎調査方法:インターネットによるオンライン調査と質問紙調査(いずれも同じ内容)
◎調査期間:2019年6月20日(木)~8月20日(火) 続きを読む

調査報告会 「リーダーシップの性差とジェンダー・バイアス調査から見えてきたこと」

NPO法人GEWEL/一般社団法人経営倫理実践研究センター 共同主催
調査研究中間報告会

女性活躍推進のひとつの象徴である管理職登用において、日本は先進諸国中で大きな後れをとっています。

その背景にはどんな要因があるのでしょうか?

実際のところ、リーダーシップに性差はあるのでしょうか。

リーダーシップの性差に、ジェンダー・バイアスは関係しているのでしょうか。

また、企業で行う女性活躍推進施策にはどのような効果があるのでしょうか。

「リーダーシップの性差とジェンダー・バイアス調査から見えてきたこと」

 

こうした実態やその背景を明らかにするため、文部科学省の科学研究費を得て、2017年度から4年間かけて行われている調査研究があります(研究者代表;淑徳大学教授・野村浩子)。
2018年の夏に実施した定量調査では、上場企業25社2500名を超える方々にご協力をいただき、興味深い分析結果が得られました。

 

このたび、ここまでの研究成果の中間報告会を開催します。

■分析結果の報告内容
◇組織リーダーは、望ましさの程度が似ている男性向きで、女性はふさわしくないというジェンダー・バイアスがある
◇女性のほうが、各階層ともジェンダー・バイアスが強い
◇リーダー意欲に男女差はない。昇進希望役職の高低によって差が開く
◇リーダーシップ・スタイルは、どの階層でも男女差はない
◇計画的に女性管理職育成を行う企業ほど、ジェンダー・バイアスが低い

結果の報告後は、参加者の皆さんとのディスカッションも予定しています。
どうぞお気軽にご参加ください。
日 時:2018年12月5日(水)10:00ー12:00
会 場:BERC会議室 東京都港区赤坂1-1-12明産溜池ビル8階
定 員:50名(先着順ですが、会員を優先させていただきます)
参加費:無料
申込み:こちらから(http://www.berc.gr.jp/modules/event/event.php?eid=24)
(共同主催のBERCさまページにリンクします)

 

■報告者:淑徳大学教授・野村浩子先生、目白大学客員研究員・川崎昌先生

【報告者プロフィール】
野村浩子(ジャーナリスト・淑徳大学教授)
62年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業後、就職情報会社ユー・ピー・ユーを経て、日経ホーム出版社(現日経BP社)発行のビジネスマン向け月刊誌「日経アントロポス」の創刊チームに加わる。働く女性向け月刊誌、日経WOMAN編集長、日本初の女性リーダー向け雑誌「日経EW」編集長、日本経済新聞社・編集委員などを経て、2014年4月から、現職。財務省・財政投融資審議会、文部科学省・日本ユネスコ国内委員会など政府・自治体の各種委員会委員も務める。著書に「女性に伝えたい 未来が変わる働き方」(KADOKAWA刊)、「定年が見えてきた女性たちへ」(WAVE出版社)、「働く女性の24時間」(日本経済新聞社刊)

川崎 昌(リサーチャー・目白大学客員研究員)
大学卒業後、市場調査会社勤務を経て、EAPサービスを提供するプロバイダーで、相談室カウンセラー・組織人事コンサルタントとして勤務後に独立。企業の組織開発・人材開発の業務に携わりながら、社会人大学院生として質問紙調査・実験に基づく解析と設計をテーマとした研究に取り組み、博士(経営学)の学位を取得。現在、目白大学経営学部経営学科 客員研究員、株式会社シード・プランニング 客員研究員、組織人事コンサルタントとして活動中。
http://researchmap.jp/sho-kawasaki/

10年の変化 働く女性の意識調査2017概要報告

2018年2月15掲載/2018年4月15日更新  GEWEL理事 高見真智子

NPO法人GEWEL(ジュエル)は、2003年の創立以来、日本の働く女性たちの意識を探り、ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)の実現を図るための支援を行ってまいりました。本調査は10年前に実施した内容をもとに行い、働く女性の意識の変化から、D&Iおよび女性活躍推進の進捗等を省察し、今後のD&Iの普及に活かしていくことを目的としています。このたび調査結果がまとまりましたので、概要をご報告申し上げます。

<ポイント>

  1. 働く女性の就業継続意識~就業継続派は増加~
  2. 働く女性のキャリア観~管理職志向派は増加~
  3. D&Iの浸透~職場内の男女平等状況は変化なし~

・女性のキャリア観やD&Iの浸透に関しては、2007年時の前回調査と比較し前向きな変化が確認できる一方で職場内の男女格差の解消は依然として課題であることがわかる。

・前回調査を行った2007年以降、次世代法の改定や女性活躍推進法の制定等、女性活躍やダイバーシティを推進する政府の動きは加速している。しかし、その効果は女性たちのキャリアや昇進に関する意識変化にとどまっており、職場環境や働く状況は依然厳しいものがあり、めざす状態になっているとは言い難い。

 

<調査概要>

  • 有効回収数;1,095名
  • 調査対象者;働く女性全般
  • 調査方法;インターネットを通じたWeb調査
    (ネットリサーチ㈱マクロミル “Questant”を利用。無記名、自記入式調査票の様式)
  • 調査期間;2017年7月3日(月)~9月8日(金)
  • 調査実施者; NPO法人GEWEL

1.働く女性の就業継続意識~就業継続派は増加~

  • 回答者の56.4%は「定年まで働き続けたい」との継続就業意識を持つ
  • 働く目的は「家計」が最多で32.2%。次いで「仕事を通して成長したい」が27.3%
  • 子どもを持った後の就業継続意思を持つ回答者(すでに両立している人も含む)の割合は63.2%

定年まで就業継続をイメージしている働く女性の割合は56.4%と過半数を超えた。前回の2007年調査と比較すると就業継続意思を示す層の割合が16ポイント増加。長期で働くことを考える層が増えていることがわかる。働く目的は「家計」と回答した割合が3割を超えた。また、両立を前提としている回答者は、前回調査より19.5ポイント増加し、6割を超えた。一方で子どもを持った後、「継続就業は難しい」と感じている層も未だ11.1%存在している。その理由は「子育てに必要な第三者の協力を得ることが難しい」が最多で54.5%と過半数を占めた。

長期軸で経済的な責任を意識しながら、かつライフイベントと仕事を両輪で進めようと考える女性たちの増加が見られる。一方で、未だライフイベントとの両立の障壁を感じている人も存在しており、その半数以上は、理由を「他者の協力を得られにくい」状況と回答している。

<自由記述より>

  •  今の組織にこだわらず定年後働き続けられるまで働きたい(運輸業)
  • 定年まで働きたいが、結婚出産時は休みたい(製造業)
  • 定年という価値観なく働き続けたい(接客業)

 

2.働く女性のキャリア観~管理職志向派は増加~ 

  • 「将来管理職になることを考えているか」との設問では「どちらともいえない」との回答が最多で27.8%であったが、「すでに管理職」「将来管理職になりたい」との双方の合計は45.0%。
  • 「管理職になりたくない」理由のトップは「今まで以上に長時間働きたくないから」。管理職否定派の43.8%が選択している
  • 社内に「参考になる女性の先輩がいない」とした割合は41.8%

「将来管理職になることを考えているか」との設問では「どちらともいえない」との回答が27.8%で最多であったが、「すでに管理職」(24.7%)、「将来管理職なりたいと考えている」(20.3%)を合計した45.0%は管理職志向を持っていることがわかる(以下管理職志向派)。前回調査の管理職志向派の合計、21.6%より23.4ポイント増加していることがわかる。

また、社内に同性のロールモデルを持たないとの回答者は41.8%と前回とほぼ変化がない。ロールモデルは、キャリアビジョンの明確化やモチベーションに影響するといわれ、ロールモデルの育成を意識している組織も見られるようになっているが、本調査では変化は見られなかった。

<自由記述より>

  • 管理職になるキャリアパスはない(医療)
  • 管理職という肩書きに魅力を感じない。給料が上がるだけがいいことではない(広告業)
  • 男女格差により昇進は諦め、パートに変えた(コンサルティング業)

 

3.D&Iの浸透~職場内の男女平等状況は変化なし~

  • 社内における男女の差について「男女平等」との回答は28.6%。最多は「どちらかというと男性が優遇されている」が最多で39.3%
  • 男女差の内容は「昇進・昇格に差別がある」との回答が最多で44.6%
  • ダイバーシティ(概念)の理解については「聞いたことがなく知らない」との割合は前回調査の32.6%から14.1%と減少

職場での男女のギャップは、前回の2007年結果とほぼ変化はない。同様に男女の差を感じる要因のトップ「昇進・昇格に差別がある」との回答割合も前回調査と変化がなかった。社会的な問題意識の高まりから回答者の問題意識が喚起されていることを勘案しても、依然男女のギャップは大きな課題といえるだろう。一方で前回と比べ差異がみられる項目は、「賃金に差別がある」(前回より -11.6ポイント)、「結婚したり子供が生まれたりすると勤め続けにくい雰囲気がある」(前回より -8.8ポイント)、「女性は定年まで勤め続けにくい雰囲気がある」(前回より-14.1%)となりこれらの点での変化を感じている回答者が確認できる。

ダイバーシティの認知度に関しては、「聞いたことがなく知らない」の割合が前回より18.5ポイント減少していることがわかる。

<自由記述より>

  • 長時間働ける人が上に行く。日本的な女性の役割にはまっている人は続かない(自治体)
  • チャンスの機会の不平等(製造業)
  • とくに男女差別は感じない(運輸業)

詳しくは、調査結果全体版をご参照ください。


<GEWELからの提言>

本調査はNPO法人GEWELが2004年から開始した調査で、働く女性の意識やD&Iの状況を定点観測することをねらいとし、2007年まで隔年ごとに実施していた。前回の調査から10年が経過した本調査は、敢えて前回の2007年に実施した調査とほぼ同じ内容で実施している。(一部に、現在では違和感のある表現もあったが、10年の変化を忠実に検証することをねらいとしたためである。)調査の結果から、女性のキャリア観(就業継続意識や昇進への意欲)やD&Iの認知状況に関しては、2007年時の前回調査と比較し前向きな変化が確認できる。一方で職場内の男女差は依然とした課題であることがわかった。

女性の意識変化から組織や社会の価値創造へ!その鍵はインクルージョン

前回の調査実施から10年。次世代法の改定や女性活躍推進法の制定等、女性や多様性を後押しする政府の動きが顕著となり、現在は「働き方改革法案」や「人生100年時代構想会議」の動きに注目が集まっている。女性の活躍推進は社会的な課題であるとの、位置づけがより明確になっている。経済界も温度差はあるものの大企業を中心に、ダイバーシティ推進に着手する組織は着実に増加している。しかし調査結果からは、働く女性たちの意識の変化は確認できるものの、職場や社会が変化しているとは言いがたい現実が見える。

では、何が次のステージに向けた鍵となるのか?それは、「インクルージョンの浸透」であると考える。このテーマは、私たちが、これまでの試行錯誤の経験からたどり着いた現在の活動テーマとも重なる。現在、私たちは、設立当初からフォーカスしている女性のエンパワーメントやリーダーシップ開発も引き続きのテーマとしながら、「インクルージョン」の浸透により力を入れている。これは、多様性を集団の中に増加させていくことにとどまらず、ひとり一人が自分の個性に価値を置き(自己肯定)、同時に集団と一体感を持ち主体的にかかわり(エンゲージメント)、そのうえで個人を包含する組織やコミュニティが、個々の可能性を開花させようとする文化や組織行動(働き方・評価方法・コミュニケーションの取り方等)を保有する状況をめざすものだ。こうしたベースがなければ、女性のみならずいかなる多様性も活かされず、当然、個人の働きがいも、その個人が所属する組織やコミュニティの価値向上も困難だ。

インクルージョンの浸透に必要なこと

ではインクルージョンの推進に必要なことは何か?まず組織内の浸透については、自分を含む組織を構成する誰もが、「個性」という多様性を持ち、その違いこそが組織の価値向上に欠かせないエンジンになるという共通認識と、多様なメンバーが価値を生み出すために必要な組織行動の浸透が必要だ。加えて、これまで女性活躍やD&Iを意識的に推進していない組織であっても、すでにその内部は意識せずとも性別だけでなく、ワークスタイルや価値観など様々な多様性が存在し、まさに「多様性の器」となっている。インクルージョンの浸透は組織間の共通課題になってきているといえる。しかし、浸透や取組の実態は企業間で差がある。今回の調査に協力いただいた企業間のデータを比較すると、D&Iの概念の理解度は大きく異なり、同時に、企業の風土が、所属する女性の意識へ影響を与えていることも確認できる。

今回の調査で確認された、女性の前向きな意識変化を組織の力に変換していくためにも、トップからフロントラインまで全社にD&Iを文化として定着させると同時に、無意識に繰り返されている組織行動(働き方や意思決定、評価や昇進のスタイルなど)を再定義し、制度と人的プロセスの両面での改善をしていくことが必要だ。特に人的プロセスの面では、本調査で、職場内に相談できるメンター的な存在を持つ人は、依然、約3割にとどまり、インフォーマルな支援者の存在は継続した課題であることが明らかになった。D&Iの施策として、女性やLGBT等、少数派の当事者をつなぎ、相互支援関係を強化する取組みは有効とされ、メディアにも好事例として取り上げられているものの、改善の動きは弱い。制度だけでなく、こうした支援関係などの人的プロセスを含む、全体性のある活動設計がインクルージョンの浸透には重要だ。

また、同時に個人も、D&Iが注目される時代にあたり、自分の中にある多面性に気づき、他者との違いを肯定的にとらえ、違いを持つ他者と協働する、インクルージョンの実践者としての発想が必要となっている。今回の調査の自由記述を見ると、個人のライフスタイル志向を反映する記述は、より多様化している。また選択肢が回答者の実態と合わないため回答に躊躇したという声や、GEWELの活動についても、働き方の多様性、100年人生、就業形態、グローバル等様々な視点を入れるべきだという助言もいただき、D&Iの推進ニーズも広がっている。また、自己の能力評価についての設問では、「自分の努力」を肯定的に評価する割合は、8割を超えているものの、「自分の能力に対する自信」や「組織を超えた実力」を肯定的に評価している割合は4割程度だった。所属する組織で努力はしているが、成長の確信を持ちきれない女性たちの姿が見える。こうした背景から、私たちの事業も、「体験共有」(越境学習やリーダーシップ体験から、D&Iを体感し実践者となる体験学習プログラム)に力を入れている。実施の結果を見ると、既存の組織の枠を超えた新たなチャレンジや、異なる価値観を持つ他者との交流が自他を活かすための気づきや、学習の機会となっている。これまでD&I推進のメインスタイルは、ビジネスの領域でかつ、組織主導型の傾向にあったが、ライフシフト等の潮流を鑑みると、組織よりもむしろ個人が、豊かな人生を模索する過程の中で、自分らしさをどう活かすか自問し、組織の枠にとどまらない試行を経て自己を開発していく視点が必要となっていくだろう。

 


本調査は、GEWELやD&Iの普及を支援してくださる方々のご協力で、実施することができました。改めて御礼を申し上げます。調査結果から、ビジネスの枠組みだけでインクルージョンを論じる段階ではない時期にあることを実感しています。家庭・教育機関・ビジネス以外の社会人の活動領域、そして社会の課題に、D&Iをかけ合わせ活動していくことが私たちの役割だと受け止めています。どうぞ、引き続き、GEWELの活動をご支援ください。

お問合せ先:GEWEL事務局  office@gewel.org(高見)