レポ:「気ままにダイバーシティトーク Vol.2」教育方法選択の多様性 〜平均から外れるという選択〜

イベント名: 気ままにダイバーシティトーク(2021年11月6日)

テーマ: 教育方法選択の多様性 〜平均から外れるという選択〜

ゲスト: 大谷育美(教育起業家/カーサ・デ・バンビーニ代表)


■ 意図

「気ままにダイバーシティトーク」は「ダイバーシティをもっと身近に、カジュアルに語る場」として企画されています。

今回は未就学の教育分野に焦点を当てて開催。


■ ゲスト紹介

教育起業家の大谷 育美さんは、

  • 保育士・高校英語教員・モンテッソーリ教員免許を持つ。

  • 北九州で、3-6歳のモンテッソーリ「カーサ・デ・バンビーニ」、0-3歳のモンテッソーリ「RIVERWALKこどもの家」を経営。

  • どちらも企業主導型保育事業として満員・ウェイティングリスト多数の人気園。

  • 「モンテッソーリ教育×バイリンガル教育」を実践し、子どもの自主性を尊重する保育を行っている。

  • 現在は娘と夫がオランダに移住し、国際的な教育にも関わっている。


■ ゲスト・トーク

1.教師としての原点とモンテッソーリとの出会い

大谷 育美さんは高校の英語教師時代、

「生徒が自分の進路を決められない」「欠席の連絡も親まかせ」な状況に疑問を抱き、

“自分で考える力”を育む教育を模索する中でモンテッソーリ教育に出会った。

実践するうちに「変わったのは生徒ではなく、自分自身だった」と語り、

“人を変えようとするのではなく、自分を変える”という教育観に至った。


2.モンテッソーリ教育の核心

  • 子どもは「何も知らない存在」ではなく、**自分を教育する力(自己教育力)**を生まれながらに持つ。

  • 出産・歩行・言語などの成長も、すべて子ども自身の意思と試行錯誤による。

  • 大人は「教える」のではなく、「環境を整えて待つ」ことが役割。

「子どもが失敗するのを防ぐのではなく、
失敗から学ぶ機会を奪わないことが大切。」


3.「待つ」教育と「本物」を扱う環境

  • 大人が「危ない!」「こぼしたでしょ!」と言わず、静かに見守ること。

  • 教具は本物のガラスや陶器を使用。割れる体験を通して扱い方を学ぶ。

  • 子どもは壊すことを恐れず、次第に丁寧に扱うようになる。

  • 「花瓶を壊すのは大人の方が多い」というエピソードが印象的。


4.褒めない教育

  • 「上手だね」「すごいね」といった評価は大人の価値観の押しつけになる。

  • 褒める代わりに事実を伝える:「注げたね」「できたね」。

  • これにより、子どもは他人の評価ではなく自分の満足で行動するようになる。

「“上手”を決めるのは大人じゃない。自分で決めることが大切。」


5.家庭でのモンテッソーリ実践

  • 家に「教具」を揃える必要はない。

  • 園で“ワーク”をしている子どもにとって、家庭はリラックスの場

  • 家では「親の生活に参加する」ことが教育になる。

     例)料理・洗濯・掃除などを一緒に行う。

  • 「お母さんがしていることを一緒にする」ことが最高の学び。


6.子ども同士の関係と“待つ文化”

  • 保育園では道具が一種類しかなく、「待つ」ことを自然に学ぶ。

  • 「待たれる経験」が「他人を待てる力」につながる。

  • 取り合いや喧嘩が起きず、尊重の循環が生まれている。


7.オランダへの移住決断

  • コロナ禍での日本の教育行政対応に限界を感じ、 「平均から外れる」決断としてオランダへ。

  • 現地ではモンテッソーリ教育が自然に根付き、 多様な教育選択が当たり前に存在する。


■学び・気づき

  • 「待つ」ことの大切さ、大人が“教えることを手放す”勇気の必要性を実感。

  • 子どもを“何も知らない存在”として扱うのではなく、尊重すべき主体として見る視点の転換が印象的だった。

  • 「褒めない」「事実を伝える」というアプローチは、大人の人材育成や職場コミュニケーションにも応用可能だと感じた。

  • “平均から外れる”ことを恐れず、自分の軸で選択する勇気をもらえた。

  • 教育の本質は「教えること」ではなく「信じること」にあるという気づきを得た。


■まとめ

今回のトークは、教育の枠を超え「人がどう生きるか」に通じる内容だった。

「自己教育力」「尊重」「待つ文化」といったキーワードは、

子どもだけでなく大人にも通じる“ダイバーシティの根本”を示していた。

多様性とは、他者を尊重する前に自分の可能性を信じることから始まる。