GEWEL OPEN FORUM 2025
テーマ:地方 × ジェンダー課題
日時:2025年11月30日(日) 14:00-16:00(オンライン開催)
意図としては、地方におけるジェンダー課題の現状を共有し、全国の参加者同士が互いの視点・経験・課題意識を持ち寄りながら、地域課題解決に向けた対話とネットワーク形成を促進することを目的として開催しました。
全国各地(北海道・北陸・東北・中部・関西・山陰・九州)の自治体職員、民間企業会社員、中小企業経営者、市民団体、若年女性支援者など幅広い関係者が参加。
ゲストトーク
◆ 小笠原 千秋 氏(NPO法人 Sisterhood 代表理事/山形)
若年女性支援の実践と山形における“見えない構造問題”について語られました。
主な内容:
•山形県は三世代同居が全国最多、若年女性の声が家庭内で抑圧されやすい背景
•若年女性向けの既存相談窓口が機能していない現実(高齢層中心の利用)
•フリースペース「メイフラワー」では年間260名が利用
•利用者の特徴
10~20代:不登校・ひきこもり
30代:職場のハラスメント・孤立支援
•「引きこもっているのではなく、引きこも“らされて”いる構造があるのでは」との問題提起
◆ 山本 蓮 氏(地方女子プロジェクト/山梨)
若年女性流出問題と“当事者の声の可視化”について語られました。
主な内容:
•日本の約8割の地域で若年女性が都市部へ流出
•「消滅可能性自治体」概念の問題点
•女性を“生む人”として扱う視点への批判
•120名以上のインタビューから見えた共通課題
やりたい仕事がない
地域の低賃金問題
結婚・出産への強い同調圧
•SNSで発信すると共感が広がる一方、「自分は違う」という分断も発生
•自治体担当者の知識・熱量の差による“担当者ガチャ”問題の深刻さ
各地から事前に寄せられた「地方の声」紹介
GEWEL に寄せられた全国からの声を代表理事の篠田氏が紹介しました。
共通課題:
1. 性別役割分担の固定観念(北陸・秋田ほか)
妻が家事育児を担い、夫は関わりづらい構造
2. 若年女性の流出の深刻化
キャリア形成困難・地域コミュニティの古い慣習
3. 制度・風土の遅れ
行政や企業の体質が依然ジェンダー固定役割に基づく
4. 求められる未来像
「どんな選択でも幸せになれる地域」への転換
◆ LGBTQ+ 当事者のメッセージ(五十嵐理事)
当日の参加が叶わなかったためビデオにて以下を共有:
• 地方の“距離の近さ”が当事者にとっては 言えない/隠すしかない 生きづらさにつながる
• 話したことがすぐ周囲に広まる
• カミングアウトする・しないの双方が尊重される環境づくりが必要
• 地域全体の“空気感”が当事者の安心に影響する
パネルディスカッション
テーマ:「誰に・どう働きかけたいか?」
選択肢例:
①地方の若年女性 (39%)
②地方の中高年女性 (32%)
③地方の若年男性 (4%)
④地方の中高年男性 (25%)
⑤地方の子どもたち(11%)
⑥地元出身者(14%)
⑦移住者(4%)
⑧地元の自治会・町内会など(14%)
⑨地元企業(43%)
⑩自治体職員(32%)
⑪首長(29%)
⑫地方議員(21%)
⑬国の省庁(4%)
⑭国会議員(4%)
⑮その他(7%)
※カッコ内の数値は当日参加者からの回答による数値
ディスカッションの中で出た主な論点
• 行政担当者が短期異動のため、啓発が継続しづらい
• 地域で活動する個人の負担が大きい
• 婚活政策など「女性像の押し付け」への違和感
• 中小企業のジェンダー理解の遅れ
• 「性的マイノリティの話を入れると議論が複雑になる」との声に対する課題感
本フォーラムを通じて得られた示唆
◎ 地方特有の“構造的な生きづらさ”の存在
個人の問題ではなく、地域全体の慣習・制度・家庭構造が課題の背景にある。
◎ 当事者の「声が届かない」状況
若年女性、性的マイノリティ、地域外に出た女性など、発信の場が不足。
◎ 多様な立場をつなぐ対話の場が必要
立場・世代の違いから生じる断絶を越えて、ネットワークづくりが重要。
◎ ジェンダー課題は“中小企業”と“自治体”が鍵
企業文化と行政制度が変わらない限り、個人が変わっても状況は改善しにくい。
まとめ
本フォーラムは、地方でのジェンダー課題を多角的に捉え、実践者同士が課題・知見を交換する貴重な場となった。
また、各地で活動する個人・団体が互いに学び合うことで、地域の未来をつくるための一歩を共有する機会となった。
