開催概要
開催趣旨:理事3名が世界のダイバーシティ現場を体験し、そこで得た気づきや学びを共有する。
登壇者:理事3名
- 篠田 寛子(代表理事)(GSWに参加)
- 小嶋 美代子(理事)(GSWに参加)
- 五十嵐 ゆり(理事)(マルディグラに参加)
オープニング
設立者・堀井きみ子氏の逝去を受けて、その功績に触れながら開会。
堀井氏は「女性の自信のなさ」をジェンダー課題の本質として調査・発信してきた人物であり、彼女の志が今もGEWEL活動の原点にあることが語られた。
本会はその志を引き継ぎ、**「世界の現場から見えたD&I」**を共有する趣旨で実施された。
グローバル・サミット・オブ・ウィメン(GSW)報告
■ 篠田 寛子(代表理事)
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開催地:スペイン・マドリード(2024年5月)
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テーマ:「Energizing Economies of the Future(未来の経済を活性化する)」
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参加規模:70カ国・約1000人、日本からは8名
🔹 参加目的
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日本のダイバーシティの現状を海外と比較したい
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スペインの社会変化(独裁→民主化→ジェンダー平等)を肌で感じたい
🔹 現地での印象
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AIや気候変動など「世界共通のテーマ」に対する女性リーダーの議論が中心。
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以前のような「女性活躍」単独テーマより、社会全体の課題を共有する方向へ進化。
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特に印象的だった言葉:
> 「AIに1ドル投資したら、人間にも1ドル投資を」
AIの進化と共に“人間性を磨く重要性”を強調。
🔹 学び
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「AIの倫理性」から「人間としての在り方」を考える契機に。
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“外側から見る”のではなく、“自分が中にいる”感覚を得た。
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海外で少数者(日本人)として参加することで、連帯と共感の実感を得た。
■ 小嶋 美代子(理事)
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GSW参加歴10年以上。2013年初参加、2017年東京大会運営にも関与。
🔹 テーマ変遷
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初期は「Women in Business(女性の経済参加)」中心
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現在は「社会変革を担う女性リーダー」へと発展
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招致活動により2017年東京大会が実現
🔹 今回の気づき(5つのテーマ)
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ジェンダーペイギャップ:
すべての議題の背景に存在。もはや独立テーマではなく、常に前提化されている。
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ソートリーダーシップ(Thought Leadership):
哲学や価値観を発信し、共感を通じて人を動かすリーダー像。
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バイオレンス(暴力)問題:
サミットのクロージングテーマ。
主催者は「この問題を解決するのは私たちビジネスリーダー」と強調。
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AIと倫理性:
テクノロジーと人間性のバランスへの警鐘。
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プリビレッジ(特権)意識:
自らの立場や恵まれた条件を自覚し、他者の困難を想像する視点が重要。
マルディグラ(オーストラリア・シドニー)報告
登壇者:五十嵐 ゆり(理事、LGBTQ当事者)
■ イベント概要
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正式名称:Sydney Gay and Lesbian Mardi Gras
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開催時期:毎年2〜3月(夏)
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参加者:約50万人(世界最大級のLGBTQパレード)
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起源:1978年、同性愛差別に対するデモから始まる。
→ 現在は政府・企業・市民が一体となる祝祭へ発展。
■ 現地の様子
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シドニー全体がレインボーカラーに装飾。
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警察官・消防士・企業(カンタス航空・Canvaなど)もパレードに参加。
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障がい者や盲導犬団体など、多様性の象徴として可視化が進む。
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街全体に「あなたは歓迎されている」という空気がある。
■ 体験と気づき
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十数年前はアジア人差別を体験したが、今回はまったく感じず。
→ 社会の成熟とインクルージョンの進化を実感。
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パレードでは日本チーム「カラフルチェンジラボ」として参加。
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高齢のレズビアンカップル(80代&70代、交際48年)との交流から、
**“生き抜いてきた歴史をつなぐこと”**の重みを実感。
■ 学び
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“多様性”はイベントではなく日常の中に根づく文化。
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可視化(ビジビリティ)が当事者への安心感をもたらす。
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「街の景観がメッセージになる」——無言のインクルージョンの力。
クロージングディスカッション
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世界のD&I現場では「課題を超えて、連帯・共感・人間性」が軸になりつつある。
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日本の課題は「他人事から自分事へ」どう変えていくか。
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ダイバーシティは特別な取り組みではなく、生き方そのもの。
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参加者からも「自分の職場や地域で、何をどう伝えるか考えたい」との声。
まとめ(学びと気づき)
観点 |
学び・気づき |
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グローバル視点 |
世界ではD&Iが“社会全体のテーマ”として語られている。 |
テクノロジーと倫理 |
AI時代こそ“人間らしさ”の投資が必要。 |
ビジネスの責任 |
バイオレンスや格差も「企業の課題」として捉えられている。 |
個人のリーダーシップ |
ソートリーダーシップ=「自分の思想を発信する勇気」。 |
多様性の文化化 |
レインボーが日常にある社会が人を安心させる。 |
所感
海外のD&Iは「政策」や「制度」を超えて、文化・空気・誇りとして根づいている。
一方、日本ではまだ“正しさ”で語られがち。
本会での3名の体験談は、**「多様性は遠い理想ではなく、身近な実践」**であることを示していた。