アジア女性社会起業家の伴走を終えて

GEWEL副代表理事 小嶋美代子

アジア女性社会起業家ネットワーク(AWSEN:Asian Women Social Entrepreneurs Network)が主催する「Global Women Impactors」は2017年3月に発足し、GEWELもその活動に協力していました。日本の女性がアジアの女性社会起業家のメンターとなり、製品やサービスの日本展開実現に向けて伴走する約6か月のプログラムです。

2017年12月2日(土)、その最終報告会がTOKYO創業ステーションにて開催され、6ヶ月間の成果と気づきや学びを共有しました。

最初に、主催者の渡邉さやかさんから関係したすべて方々への御礼が述べられ、このプログラムをメンターとともに作ってきた思いとその過程が紹介されました。3月発足時にも多くの参加者がありましたが、半年後の最終報告を知りたいと、今回も100名近い人が参加し、国境を越えた社会課題解決の事業拡大に関心が高いことがわかりました。

★GEWELひとこと★
一人でできることは小さくても、国を繋げて課題に取り組むことや関心を持つこと自体 が素晴らしいと感じました。

タイでITによる社会課題解決を目指すパチャラポーン・パンスワンさんは、防災教育アプリ、鳥インフルエンザ対応アプリなどを非営利機関と連携して開発する社会起業家です。デザイン、経営、プロジェクト管理など、得意領域の異なるメンバー5名がメンターとして伴走しました。このメンターグループは、当初からゴールを明確にし、求める結果も着実に出していました。メンターとは一緒に踏み出せる相手である、ということを経験から学んだと締めくくっていました。GEWELから参加した石田映子さんも、タイ現地の訪問ができなかったことで歯痒い思いもあったものの、チームメンバーとの連携を密にし、メンターとして取り組んでいました。

パンスワンさんは「メンターに何を聞くのかすら不明のままスタートしたが、メンターのおかげで多くを学び、挑戦できたと言える」とメンターに感謝していました。

★GEWELひとこと★
3月の開始時点では、IT事業であることは明確であるものの、実際のサービスやアプリ、またそれを利用して解決している社会課題までは理解しないまま始まりました。半年で日本企業とのマッチングとテストマーケティングまで至ったのは、ITという世界共通の技術基盤、および共通のプロジェクト管理手法が背景にあったことが発表でわかりました。言語や文化が異なっても共通基盤は第2の言語になり、多様性あるコミュニティの中立的な交流に役立ちます。

タイのパサウィー・タパサナン・コダカさんは、農村コミュニティと連携し、オーガニックコットンのハンドクラフト商品を開発・販売しています。この日は出席していませんでしたが、半年間のプログラム中に積極的に来日し、メンター主催のビジネスミーティングやプレゼンテーションを実施していました。メンター4名は、この日も商品を身に着け、発表していました。このプログラム前半で、メンターの定義などを議論したのち、後半には市場調査、バイヤー紹介などの戦略を練りながら関係者を拡大しました。リーダー小崎なるみさんは、メンターグループの中だけで議論していた時間を頭でっかちだった、と振り返りました。メンターが躓いて悩んだことで、メンターの学びと成長が大きかったと話していました。

雪のなか青森から駆け付けた外崎真由美さんは、青森県でイベントを開催したことでパサウィーさんだけでなく青森のひとにも学びがあったことを報告しました。
★GEWELひとこと★
商品であるコットンのジャケットやストールを発表者が着用していたのが印象的でした。社会起業家の持つ背景と目指すゴールを確認することから始まるこのプログラムで、メンターに悩みが起きるのは自然なことです。居住地が離れていることやタイ現地への渡航経験有無など、違いのあるメンターがグループとなり真摯に向き合ったことで、社会起業家とメンターのお互いにとって有効なヒントが得られたのでしょう。

インドネシアの食品事業を展開するヘリアンティ・ヒルマンさんは、すでに52,000以上の農家と契約、700 種以上の農作物を扱っている社会起業家です。加工された商品は日本以外の国に輸出されているため、当初から日本への展開が予想しやすい事業でした。ところがメンターの気持ちは、「わかるようでわからない、わからないようでわかる」気持ちで、「自分たちのやろうとしていることが本当に役に立つのか」という葛藤が続いたそうです。メンター鳥巣彩乃さんは、プロジェクトリーダーとしての難しさを感じつつも、社会起業家と寝食ともにする覚悟の重要性に気づいたと振り返りました。そのうえで、「自分が相手に必要であると信じておせっかいすることが本当の課題を発見する道である」と結びました。
来日していたヒルマンさんは、このメンタリングを受けたことで、日本進出の課題が明確になり、これから何をすべきかがわかったと嬉しそうに報告していました。

★GEWELひとこと★
中間報告会でGEWELから厳しい指摘をしたチームでした。相手が何をしたいのか、何をしてほしいのか、直接的に尋ねても答えを理解することができません。言語も文化も異なるひと同士が相互に理解するためには、相手を信じることから始まります。しかしそれは、ここに書いているほど簡単に実行できることではありません。メンターがそこに気づいたことは大きな収穫だったはずです。

★GEWELまとめ★
メンターのみなさんが、本業も生活も多忙ななか、大きな一歩を踏み出したことに心から尊敬の拍手を贈ります。3名のアジア社会起業家に成果をもたらせた理由は、メンターが成果にこだわる経験を積んできたからです。また、中間報告会からさらになる成長を遂げたのは、①女性同士であるという共通性、②国・文化・経験などの多様性、③問題を発見することから始めたこと、の3要素だったと考察しました。現代は、正解のない問題を解く時代と言われますが、みなさんが取り組んでこられたのは、共通の問題すら設定されていない状態でした。よい正解を見出す前に、よい問題を発見し、それを共通性にすることです。非常に複雑で難しいことですが、それに挑戦したメンターのみなさんは、貴重な経験と成長を手に入れることができました。GEWELから3名が参加したことは大変誇らしいことでした。社会貢献の糧として、引き続き広く影響を与えていくみなさんを、これからもGEWELは応援しつづけます。